はじめに

 わたしは、平成27年度第1回(第44回)の気象予報士試験に合格することができました。また、気象庁長官への登録 手続きも完了し、「気象予報士」の資格登録がなされました。
 以下ここに、気象予報士試験の合格に至るまでの、わたしの受験・学習について体験記をまとめました。
 合格するまでの受験記録、学習記録、心構えなど思いつくままに書き綴りました。受験の参考になれば幸いです。 また、学習はまったくの独学・独習で、専門のスクールとか通信講座とかの類は利用していません。合格するまでに時間的な 余裕があったればこそ可能であったとも思います。

2015年 12月 5日 初版 筆者記す

来歴
2015.12.17.初版公開
2015.12.29.Rev 1.1 jpgファイル名ほかを一部修正

1.受験結果

 まず始めに、今までの受験の経緯とその結果について総括します。合格までの道のりは次表のとおりです。

合格までの道のり ( ):自己採点 [ ]:合格基準
No年度・回一般知識専門知識実技
1H25-1[40]× (7/15)[11/15]× (10/15)[11/15]× (20%)[58%]
2H25-2[41]× (6/15)[9/15]○ (10/15)[10/15]× (53%)[64%]
3H26-1[42]○ (9/15)[9/15]免除 [11/15]× (59.5%)[60%]
4H26-2[43]免除 [9/15]免除 [9/15]× (65.5%)[61%]
5H27-1[44]免除 [10/15]○ (12/15)[9/15]○ (65.5%)[66%]

 平成25年度第1回の試験(2013年8月)の受験のため、学習を開始したのは2013年5月と、 およそ3か月前からです。合格するまで、試験を5回受け、学習期間は2年と数カ月に及びました。
 合格するまでの平均受験回数が3回とか4回とか言われていますが、わたしの場合は5回目でやっと 合格と、平均よりやや余計にかかってしまいました。

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2.試験の経緯

 連続5回の挑戦で、漸く合格までたどり着いた。その経緯を、過去のブログを参考に、振り返ってみました。

2.1 受験の動機と目的

 気象予報士を受験しようと思い立った目的というか、動機をごく簡単に紹介します。

2.1.1 受験のきっかけ

 高校時代、クラブの地学部気象班に所属しており、毎日の定時気象観測とかNHKのラジオ気象通報 による天気図描画をして遊んでいました。また当時、フィルムカメラを用いた雲の撮影などを趣味として いました。
 しかし、大学進学と同時に、工学系でしかも化学系であったため、理学部地学系とは分野が大いに異なる 方面に進むことになった。大学、大学院を卒業すると同時に化学プラント設計・建設会社に就職し、エンジニアの道を 歩むこととなりました。そして定年までの、実に30余年を化学系エンジニアとして、プラントの設計、開発、研究の 仕事を経験したことになります。この間、気象に関する学習や勉学は一切していません。
 会社を定年退職したことをきっかけとし、独立起業し、コンサルタント業務を自営するようになりました。 コンサルタント業務に必要な、各種資格試験を受験(危険物、高圧ガス取扱、 情報処理、知的財産など)しているうち、昔の趣味の延長で、理学部地学系の気象予報士試験に挑戦してみよう と思い立ちました。

 高校時代の気象に係わるクラブ活動に回帰し、難関の気象予報士に、独学で、スクールとか 通信講座とかに通うことなく、挑戦することを決心しました。退職後であり、時間はふんだんにあって、 主に地元の図書館で平日の午前中は籠もって、ひとり座学として、勉学を始めました。
 当初は、気象予報士の資格をとって、気象キャスターになろうとか、ウェザーニュース社のような 気象予報会社に職を見つけようとかの意図は全くなく、単に資格挑戦だけが目的であった。資格挑戦 することにより、ボケ防止を兼ねて、コンサルタント業の足しになるかもとの考えしかなかった。
 数回の受験を重ねるにつれて、また、趣味であるカメラやロードバイク乗りをし、屋外の気象、 特に空に浮かぶ雲、彩雲、虹、暈といった自然現象をカメラに収めるということを繰り返していました。 また、気象予報士の資格を持つ人が周囲にほとんどいない、稀有な存在であることが分かり 始めたので、地域や地域の小学校などの理系の講師ボランティアでもしてみようかとも思い始めました。

 趣味とするカメラで十種雲形の典型的な雲の種々形態などを写真として残し、これをWebページに分類し、 閲覧できるようにすることが、さしあたっての目標です。雲の姿以外に、気象に係わる大気現象もカメラに 納め、画像として残したい。特に雷の稲妻、竜巻などの特異現象や彩雲、虹、ハローといった光学現象を カメラに納めることが、現在の夢です。

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2.1.2 プロフィール紹介

 ここで、現在のわたしのプロフィールを簡単に説明し、学習する上での特殊事情や背景を記しておきます。
 中学・高校のとき、天体観測に興味があり、当時はフィルムカメラで天体写真の撮影や雲の写真撮影 を楽しんでいました。その後、工学系大学の化学系学科に進学し、卒業研究では化学工学(化学と機械 を合わせた学問)を専攻し、大学院修士課程まで終了しました。
 大学の化学系ですので、熱力学や、理想気体の法則、溶解度、蒸気圧、ダルトンの法則とか、物理と 化学の中間領域の学問を、専門過程で授業を受けています。教養課程では物理学、機械工学、電気・電子工学、など 工学系一般の知識を教養として授業を受けました。また専攻した化学工学という学問では、化学装置・化学機械に 係わる設計などを学びます。コンピュータによる数値計算とか、計測、制御、流体力学なども学びます。

 その後、化学プラントの設計・建設会社に、プロセスエンジニアとして職を得ました。エンジニアとして、 化学プラントの設計、建設、試運転指導をはじめとし、新規プラントの研究・開発 に携わっていました。その間、博士の学位を取得しました。学位論文の研究の一部として、スパコンを利用して、流体力学の有限要素法のコードを 自力で開発した経験があります。差分法による流体力学の解析コードも、エンジニアのとき仕事として開発したことがあります。
 化学プラントの設計や研究開発では、パソコンソフトの代表であるエクセルとかワードは 日常的に利用しています。また、高級言語で技術計算向きのFortran言語を使い、 コードを開発することも、日常茶飯の出来事です。

 プラント設計会社を定年で退職したあと、自営業としてコンサルタント業を起業しました。時間的な余裕はたっぷりあって、在職中 取れなかった資格(高圧ガス、危険物、情報処理、簿記など)を、独学で次々に取りました。
 気象予報士試験も、隣の学問というか、理学系の学問で今まで学んできた工学系の学問とそれほど違いは 無かろうという、安易な気持ちで、受けてみようとした訳です。もちろん、時間はあっても、通信講座を 受ける経済的余裕はありませんので、すべて独力でトライしようと決心しました。経済的余裕がないというより、 一方通行的な授業を受けて、知識を身につけるのはもったいない気がしました。ところが…です。

 過去の学問とか経験とかが、気象予報士試験の出題範囲と比較的オーバーラップしているように 見えたことから、少し勉強すれば、合格するのではないかという甘い期待をもったのがいけなかった。
 工学系の論理的な思考方法を、悪い意味でも身につけてしまったのか、柔軟性や発想が偏ってしまう という悪い面がでることもあって、あるいは自信過剰気味に陥ること無きにしもあらずで、合格する までに5回も費やしてしまいました。
 受験を繰り返すうち、この予報士試験の合格率の低さ、出題される問題が重箱の隅をつつくような問題で あること、実技試験が制限時間との勝負であること、が次第に分かってきました。逆に合格率に低さが故に、 挑戦してみようという偏屈さがありましたけど。
 この資格試験は、知識・技能のレベルが一定以上あるかどうかを試す通常の資格試験と違い、どうも 合格者数を制限していて、毎回200名前後しか合格させないようにしているようです。数を制限して何を 目論んでいるのか理解に苦しむところです。

 愚痴っぽくなってしまいましたが、以上のような経歴です。工学系で多少、関連する学問をしたことがあるという経歴です。 合格を目指す人には参考にならないかも知れません。

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2.2 受験とその反省・対策

 過去5回の予報士試験への挑戦を、当時のブログ記事を踏まえて振り返ってみました。ブログでは受験当日の感想、気象業務支援センター(以下、センターと称すことあり)の解答例の発表のとき、 合否発表のとき、その時々の感想を記録していました。
 なお、全5回の受験会場の写真は、ブログに掲載するために撮影した、受験当日に写したものです。

2.2.1 第1回目の受験 (2013.8)

第1回目:東京大学駒場キャンパス(クリック:拡大)

 初めての受験(第40回)は、東京大学駒場でした。試験結果は、学科一般、専門ともに不合格となり、 基礎的な勉強不足を露呈してしまいました。また実技試験では時間配分まで考えが及ばず、全問のうち半分程度まで しか解答することができなかった。実技試験で問われている内容のボリュームが膨大なものであり、 制限時間内ですべての設問に解答することが難しいことを実感しました。 この結果を反省し、独自のノートを作り始めました。また、すべての過去問の収集を開始しました。

 自己採点の結果は、一般15問中7問、専門15問中10問といずれも合格ライン(一般11/15、専門11/15)に届いていませんでした。 当初の予想通りというか、一般がそれほど得点できていないのがショックです。 個々の設問を詳しく振り返ると、読み込んだテキストに出てこないところが、出題されていて 失点しているようです。学科一般の法規にしてもあやふやに記憶していたところが失点していました。

 専門は10問が正解していて、あと1問でした。こちらもあやふやに記憶していた部分で失点していました。
 一般、専門が不合格なので実技の採点はされません。

 ということで、気象予報士試験の初挑戦は、見事完敗です。
 過去2、3年の問題や第40回の問題を総括すると、出題する方が種切れして、細かい部分を突いてくる設問が 目立っているように思います。過去の設問を題材にしたテキストや問題集が氾濫している現状では、 出題者というか試験問題を考える立場の人もかなり苦労しているような印象を受けます。 やはり2、3回の受験で合格するのは難しいのかもしれません。特にスクールに通うとか通信講座を受けるとか しないと、標準の回数で合格するのは難しいかも知れません。

 初回の挑戦では、まづ試験開始の合図とともに、問題用紙の図表の切離しをする人たちばかりで びっくりしました。それに引きずられて、実技1ではわたしも切離しをしました。実技2では試しに、 切離しをしないで臨みましたが、それ程影響はないように思えました。初回受験ではとにかく時間が足りず、最後の 設問までたどり着けなかったことで、解答のスピードアップが課題であることを痛感しました。

 次回以降の受験から、実技の図表の切離しを必ずすることにしてます。というのは、低気圧や前線などの 時間変化を追う設問のとき、図表を重ね合わすとかトレーシングペーパー(トレペ)に写し取るとき、 簡単にページ移動ができるからです。
 ただし、切離しをするとき1枚毎にすると時間がかかりすぎるので、数枚まとめて切離します。切り離した後、クリップ止め する人もいますが、わたしはクリップを使わず、図の順番が狂わないように図をめくるよう心がけました。
 試験会場の机の広さにもよるのでしょうが、最後の成蹊大学の教室の机は、左右の幅はあるのですが、前後の幅が 不足気味です。出来るだけ横方向に広げるのがいいと思います。

 初回の受験が初めての経験なのですが、トレペが問題用紙に挟んであって、これをどうやって利用するかが、初めてのことで全く分かりませんでした。
 トレペの利用方法など今まで読んだテキストでは一言も触れていなかったので戸惑いました。試験後ネットで 調べてみると、図を写し取るのに利用するとのこと、漸く納得が行きました。
 図に色鉛筆などで色分けすると良いなどとは、受験テキストなどでは言っていますが、これなどもまともに 受け取って、色分けすると、制限時間内に終わらなくなる可能性があります。設問で問われている ところだけを色分けするのが良い。

 初回受験に先だって、2013年5月頃から、小倉本を読み始め、受験勉強を開始しました。後述(4.1節)の 購入図書の1~14を、初回受験前にそろえ、一通り読みとおして、受験に臨みました。ただし、この間には ほかの資格試験(知財検定)の受験勉強をしており、気象予報士の学習を中断した時期もあります。
 今になって思い返せば、受験のわずか3か月前から学習をはじめて、間に合うはずがないのは当然のことと 言わざるを得ません。無謀な試みだったと深く反省しています。それほどの難関だったと今になって思います。

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2.2.2 第2回目の受験 (2014.1)

第2回目:上智大学 四谷キャンパス(クリック:拡大)

 2回目の受験(第41回)は、上智大学四谷でした。試験結果は、学科専門は15問中10問正解で合格(合格ライン:10/15)するが、一般は6/15で不合格(同:9/15)となった。 小倉著の「一般気象学」の読み込み不足が露呈し、学科一般が自分の弱点であることが分かりました。

 一般知識、専門知識ともに、実に細かいところを突いてくる傾向が見られます。
 午後の実技1と実技2は、前回ほど時間不足ではありませんでしたが、1、2問、文章で解答する設問に無回答で提出した程度で、 残りの全問を記述することができました。正誤はさておき、時間の費やし方はほぼマスターしたようです。

 また監督官(30才くらいのバイトらしい女性)の大声というか、試験中に経過時間を言うのですが、うるさく感じました。 前日までの試験勉強で、予定していた部分まで手が回らず、悶々としていて前夜はそれほど眠れず、睡眠不足気味 の頭に響いたことを思い出します。というより集中力を途切らされたのが腹立たしく思いました。
 耳栓とか用意した方がいいけど、試験会場に持ち込めなさそうで、こればかりは不運だと諦めて、我慢するしかないか。

 反省点として、気象用語というか気象庁のHPにある、「昼過ぎ」、「宵のうち」、・・・といった気象の専門用語、 雨の強さを示す、「つよい」、「激しい」、「猛烈・・・」といった用語を特に暗記していかなかったこと。 これらが出題されてしまったのは、要反省です。
 まだこの時点では、北上大氏の「気象予報士受験応援団」の存在を知らず、したがって応援呪文も知りませんでした。

 自己採点で、実技1は100点中55点、実技2は51点で平均53点で合格ライン64%に遠く及ばすという惨憺たる結果に終わりました。
後日、実技の自己採点のため、当日家に帰ってから、提出した解答文章を思い出して、メモに書き残しておくことをこの回からするようになりました。

 以上の結果を反省すると、
1) 一般では、法令問題4問中3問を落としている。やはり細かい部分(許可・認可・届け出、義務か努力義務か) を記憶するまで手が回らなかった。
2)同じく一般で、計算問題が出来ていない。短い時間で答えを手計算で出すことに慣れていないのかも。 子供のころ、そろばん塾に通っていたらとも思うけど、後悔先に立たず。
3) 専門は、合格したのですが、シアとか不安定とかの当たりが不正解で、自分でも弱点としていた部分を落としている。
4) 実技については、前回の試験に比べ大幅に制限時間内に解答でき、スキルはレベルアップしているが、 やはり出題者が期待する解答がスラスラ浮かんでこないこと、キーワードを思いつかないことが大きく影響している。
5) 始めて受験した第40回は学科一般 7/15、専門10/15であったが、正解率はほとんど変化なしで、向上の跡が見られない。 しかし、実技に関しては、限られた解答時間内で大部分を解答したこと、 トレーシングペーパーとディバイダーの使い方をほぼマスターしたことなど、かなりの向上が認められる。
6) 実技については練習問題の不足が目立つ。短時間で解答を仕上げることが必要。
7) やはり総括すると、別の資格試験(高圧ガスと応用情報処理の2件の受験が重なった)があり、 十分な勉強時間が割けられなかった。実質11月からの3か月の学習時間しか取れなかった。

また、学科試験の突破を目標に、学科の過去問全問を収集したところまで行ったが、 時間不足でこれら過去問を解くとか眺めることまでできていなかった。

 これら反省をもとに、弱点や問題点がおおよそ把握できたと思うので、次回のため以下対策を考えた。
1) 学科の過去問のデータベース化というかドリル化し、PC上でラーニングできるようツール化する。
2) 弱点の法令、計算問題を徹底的にマスターする。
3) シアとか温度風とかの大気の運動・力学・熱力学について、徹底的に理解する。
4) 実技・専門対策の一環として、業界用語(雨、風、台風、時刻の言い回し、天気図記号など)に精通・暗記する
5) 実技の過去問を収集し、もっと練習し、出題者が何を求めているのかを適切につかむ練習を積む。
 「模擬解答と解説」本の解説部分をじっくり調査・収集する必要がある。解く上でのヒントがあるかも知れない。 ここ数年分の解説を収集すべきかも。

 こうして総括していると、はたして次回までに間に合うかどうか心配になってくる。 冬の試験後から次の夏の試験までの期間は、夏から冬の間の期間に比べ、時間的な余裕が かなりあり、根本的な対策をじっくり実施するにはちょうど時期がいい。
 具体的には、学科一般および専門について、従来はキャンパスノートに時系列で、テキスト毎に要点を 書き込んでいた。これを斬り貼りして、それぞれの学科の科目毎(一般はイ~チ、専門はイ~リに科目が設定されている) に分類・整理し、テキスト毎の重複、著者の得意・不得意 分野による知識の偏り、などを均すため独自ノートを作り始めた。独自ノートについては後述するが、 図表は原本のコピーを斬り貼りし、新しい知識はこのノートに随時追記するようにした。
 また、法令については、条文ごとに要約した独自ノートを作り、全体が見渡せるようにした。

 別に受験していた2件の資格試験はクリアしたので、今回の冬の試験以降は、気象予報士試験だけに 注力することができるようになった。

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2.2.3 第3回目の受験 (2014.8)

第3回目:成蹊大学 吉祥寺キャンパス(クリック:拡大)

 3回目の受験(第42回)は、成蹊大学吉祥寺でした。試験結果は、専門は免除、一般は15問中9問で合格(合格ライン:9/15)したが、 実技は不合格となる。実技は自己採点で59.5%であり、合格ラインは60%であった。
 このとき、論述問題の部分点をまだまだ甘く見ていた。実技の採点がはじめてのことであり、 部分点の配分が全く公表されておらず、皆目分からなかった。そのため、自己採点結果が良かったので 勘違いしてしまったことが、次の第4回目の失敗に繋がったように思う。

 試験直後のブログには、『  実技試験の出来は、確実に不合格です。実技1および実技2ともに問題のボリュームが圧倒的に多くて、 すべてを解答することができませんでした。部分的にブランクのまま解答用紙を提出せざるを得なかった。
 ここ最近の問題は難易度が上がり、しかもボリュームが多いという印象があります。 言い訳かもしれませんが、独学の限界なのでしょうか。どこかのスクールでみっちり受験対策をしないと 合格できないのでしょうか。』とあってかなり落ち込んでいた。

 一般知識がぎりぎり合格していたことは大いに反省すべき点です。事前勉強として実技を重点的に取り組んだ ことが裏目に出てしまったようです。実技もさることながら、学科一般をクリアしないと実技の採点すらしてもらえません。
 最大の反省点は、「実技をしっかりやれば、一般知識は自ずから身に着くはず」といった思いが少なからずあった ようです。やはり、出題範囲の広範な一般知識を、すみずみまで学習し、身につけることが必要だと痛感しました。 また気象業務法をはじめとする関連法令は、試験直前に条文を読まないと忘れてしまいます。 法令の条文は試験の数カ月前に読んだのですが記憶に留まっていない部分があり、失点につながったと思います。 理系の頭ではとっかかり難い事柄ではありますが、法令は一般知識に数問は必ず出題される ので、法令問を全問正解するまで理解し、記憶すべきです。

 ここで、試験日当日までの学習スケジュールの組み方に注意をする必要があります。暗記ものは 試験直前に取り組むべきことは言わずもがなのことです。わたしの場合は歳のせいか、若いころより物覚えが悪く なったせいか、近頃とみに実感しています。それと、試験までの約半年の学習スケジュールを 月単位、週単位で綿密に作る人もいるようですが、わたしの場合はずぼらで、ごく大まかに ノートの端っこに半年を示す直線を引き、当初の2/3はテキスト読み込み、最期の1/3は過去問と 暗記などという、この程度のスケジュール管理しかしていません。どのテキストをどの順番で読むなどは 行きあたりばったりです。

 一般知識の課題をどうクリアしたらよいかを思案した結果、Amazonで多少幅広く図書を購入・収集しました。 例えば「百万人の・・・」、「天気予報の手引き」、「お天気の科学」、二宮氏の一連の数値解析ものの図書とかなど を購入しました。
 新しく購入した図書は、一通りは熟読します。テキストの良否を判定し、受験の為になる、良かったものは 2巡、3巡と読むことをしました。
 だけど、振り返ってみれば、受験バイブルといわれる小倉氏の「一般気象学」をすみずみまで理解することが 最低限必要かなとも思います。 もっとも、隅から隅まで記憶した覚えはありません。

 一方、実技試験の合格基準を見るとなんと60%以上であり、自己採点では59.5%でぎりぎり不合格だと勘違いしたようです。 あと少しのところまで行っていたんだと、もう少し頑張っていればと、甚だ思い違いをしてしまったようです。
 最近の試験では問題が難問化していて、合格基準が下がる傾向があるのですが、 実技の採点方法のうち、部分点の取り扱いが全く不明で、甘く見ていたようです。
 次の試験では、一般と専門の学科試験がともに免除になり、残す実技ももう一息といったレベルまで 到達していると思い違い、慢心していたようです。
 次回の4回目試験では、あとちょっとの努力で合格するだろうと甘く見ていたのが次回失敗の敗因でした。慢心恐るべし。

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2.2.4 第4回目の受験 (2015.1)

第4回目:成蹊大学 吉祥寺キャンパス(クリック:拡大)

 4回目の受験(第43回)は、同じく成蹊大学吉祥寺でした。試験結果は、専門、一般は免除で、実技は不合格となる。 実技の自己採点では65.5%であり、合格基準は61%であったことから、論述問題の部分点は相当厳しく採点されている ことが推量された。

 試験問題のA4の図表やトレーシングペーパー、解答用紙、筆記用具、コンパス、定規など、 大学の階段教室の狭い机で広げるのですが、横方向は1座席分の余裕があっていいのですが、 前後方向の狭いこと狭いこと甚だしい。A4の解答用紙+10cmくらいの余裕しかなく、図面を横方向に広げると、 となりの人と重なってしまうほどです。も少し、余裕のある机、教室にならないのかと愚痴りたくなります。
 今回の試験問題も、実技1では出題ボリュームがたっぷりあり、計算問題もあって、時間不足の状態でした。 記述問を数問ブランクのまま提出してしまいました。また計算問題も厳密に手計算できず、大雑把な計算しか できませんでした。
 大雑把な計算が、模範解答公表後、致命傷だったことが分かりました。ちゃんと分子分母を約分し、簡単な 計算にまで変形すれば多少の手間で正解を導くことができることを、帰宅後確認した次第です。後述3.6.5節参照。
 実技1は、全体として時間不足で十分に設問を読み込み、理解せずに解答したところもあって、 おそらく5割程度の出来。実技2は、全問解答したところで、ちょうど時間切れでした。やや実技1より 易しかったと思います。7、8割の出来だと思います。合格点が60%程度と低ければ、 ぎりぎりセーフかなという印象を、受験直後、思ったようですた。

 センターの解答例発表の当日のブログには、『  結論からいうと、60%程度の出来で、合格は危ない。前回試験と同様の合格基準60%程度で あればぎりぎりかも・・・と思っていました。が、巷ネットでは今回は易しいという声もあって、 合格する確率は低いと表て向きは考えていました。採点していて、問題文をじっくり読まないで 解答したり、早とちりしたりなど、ケアレスミスが目立ちました。 もっと文章題に対して、問題を素早く理解し、問われている内容を的確に、時間に追われることなく、 スラスラ解答が書ける訓練が必要でした。
 文章題では、部分点を期待していたのですが、採点基準とかが全く分からず、あまり期待しない方がいいようです。
 次回は、専門試験の免除が切れるので、学科専門を改めて受験する必要があります。 1月の試験は準備期間が短い(9月から約5カ月しかない)ので、準備不足がありましたが、 次回はしっかり弱点を克服し是非とも栄冠を勝ち取りたい。』と弱気な発言をしていました。

 合格発表で、予想外だったのは合格基準で実技試験が61%であったことです。前回が 60%でしたから、問題の難易度が高かったようです。また合格率が4.2%とあり、これも前回の4.9% より下がっていました。例年の合格率を見ると冬の試験では低めの4%、夏の試験では5%程度と 夏の方が高めです。
 前回並みの合格基準だったら、もしかしてと思っていましたが、部分点がほとんどカウント されていないようです。部分点を期待するのは考えが甘いみたいです。 もっと思ったより厳しい採点基準だったようで、今後の反省点のひとつです。
 『次回は準備万端整えて試験に臨みたい。実技は特に時間切れで無回答となってしまうのと、 問題を丁寧に読解し、ケアレスミスを防ぐことに力点を置くべきであった。 反省すべき点はまだありますが、弱点克服に努めたい。』と、部分点の採点が厳しかったことを しきりに反省していました。

 第3回目の受験で、部分点を甘く見積もったせいで慢心してしまったことを、大いに反省し、 以下の対策をとりました。
 過去の実技試験を解いて、文字数制限のある文章題を練習するとき、今までは解答用紙を特に印刷せず、 不要コピーやチラシの裏紙を用いて、字数制限をある程度無視した練習を、繰り返してきました。その方法を 改め、 試験本番の解答用紙を印刷し、これを用いて解答練習をし、センターの解答例と比較し、 違っているところを、一字一句、赤ペンで丁寧に訂正・添削し、何処がいけないのかを徹底的に 頭に叩き込むことに変更しました。印刷のためのインク代、用紙代を惜しんではいけないという、過去を振り返っての反省です。
 もちろん、解答時間のスピードアップのため、問題を読み始めて、すべての設問を解答用紙に 記入するまで時間を計測しました。
 過去問による本番想定の練習では、第17回(H13-2)から第43回までをトライしました。第40回以前の 過去問は、出題ボリュームがそれほど大きくなく、解答の制限時間75分では、かなりの余裕があります。 しかし、第40回以降の最近の過去問は、いずれもボリュームが大きく、制限時間75分内ですべての設問に 解答することは、解答スピードを予想以上に上げないと不可能に近いことが分かります。
 実技の試験では時間内に全問に解答することが最低限必要です。それと解答を見直す時間が少しでもあれば、 なおさら有利になります。しかし見直し時間が残るのは現実とても難しいことと思う。

 次回の試験までは、従来のテキストの読み込みのほか、実技の作図練習帳を作ること、二宮本の 学習、気象庁HPの解説読みをし、仕上げに、学科専門の過去問、実技過去問に取り組み、試験直前には 暗記ものに取り組みました。

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2.2.5 第5回目の受験 (2015.8)

第5回目:成蹊大学 試験室(クリック:拡大)

第5回目:成蹊大学 吉祥寺キャンパス(クリック:拡大)

 5回目の受験(第44回)は、同じく成蹊大学吉祥寺でした。今回は階段教室でなく、 定員50名ほどの一般教室でした。机の広さは前回とほとんど変わりません。
 試験結果は、学科一般が免除で、学科専門が15問中12問正解で合格。実技も合格して、やっと気象予報士試験の 全科目で合格することができました。実技の自己採点は65.5%で、前回の反省から、論述問は厳しく 自己採点しました。一方、合格基準は66%で、ある程度の部分点が加算された様子であり、 ぎりぎりセーフといったところで合格したようです。

 大学構内に入る前にセブンイレブンで昼食とペットボトルのお茶を買い、試験開始の30分前の、 10時半ころ教室に入りました。約40名がこの小教室で受験です。 一般免除は400名近くいるのですが、多くは大教室です。
 小教室での判断ですが、学科専門では1名が欠席でした。午後実技では数名が欠席でした。 午前の出来から午後は諦めた人がいたようです。
 専門知識は、問題文を見直す時間的な余裕はあるのですが、 見直すたびに解答に疑問が出てきて、キリがないので、見直しを諦めたところで時間となりました。
 午後の実技1と実技2も、数か所を除き、難しいところもなく、全問を解答できました。 例年、時間切れで論述問の数問をブランクで提出していたことを思い起こせば、 かなり解答スピードがアップしてきたようです。 もっとも、全体として以前ほど難しくなかったのかも知れません。
 実技2で、解答できなかったのは、「土壌雨量指数と積算降水量」の表を完成させるものです。 問題文をいくら読んでも、ブランクの数字を決める方法が全く分からなかった。 数値を2か所埋めるのですが、選択肢に数字があって、この中から選ぶような設問ですので、 適当な値を選んで解答しましたが、家に帰ってもいまだにどうやって計算するのかがさっぱり 理解できませんでした。
 家に帰ってから、実技1と実技2の解答を思い出し、メモに書き出しました。後日、自己採点する のに使います。論述問の解答は正確に思い出すことはできませんが、 キーポイントのみ覚書を作りました。
 受験前夜は、お茶を飲み過ぎたのか夜中に2,3回トイレに起きたので、多少寝不足気味での受験でした。

 今回の第44回気象予報士試験の実技で、十種雲形を漢字で書けという出題があった。 雄大積雲は十種雲形ではないので、「積雲」と答えないといけない。また「卷雲」「高積雲」 も漢字でちゃんと書けないと×になる。まるで漢字書取のテストです。 あと、「千葉」県、「茨城」県も漢字で書くという出題があった。
 漢字書取り、地名書取りは十分対策がしてあったので、難なく解答できました。
 もひとつ、日本列島を真中にした天気図があって、日本の周りの海に海上濃霧警報の記号 がところどころに英文"FOG"とプロットしてあって、どことどこの海域に警報が出ているか、 海域名を答えよという出題。答えは「日本海」「黄海」「東シナ海」なのだが、まるで地理のテストです。
 これも、事前に対策がしてあって、全問正解した。
 漢字の書き取りとか地理の地名を暗記し、書けることが本当に予報士に必要なのかと疑問に思います。 辞書で調べるとか、ネットで調べる、また加減乗除の計算問題ではエクセルで簡単に加減乗除が できるという作業環境が当たり前の時代に、こうした国語・地理を丸暗記する、簡単な算数を強いる なんて、とても時代遅れではと思う。
 またまた、ケアレスミスが多い。県名を答えるところで、「千葉県」を「千葉」、 「茨城県」を「茨城」と「県」を抜かして解答しているなど、漢字は書けたけど、まだまだ不注意が目立つ。

 気象予報士試験の合否発表は、 気象業務支援センターのHPで、午前10時頃に発表されます。 学科一般の免除の受験番号32で始まる合格者の番号を見て行くと、 わたしの番号がありました。学科専門は先日の解答例で合格していることは 確信していましたが、実技は自己採点で65-66点で、従来の合格基準からするとぎりぎりセーフ、 論述問題の部分点如何ではアウトかなと思っていました。 実技の合格基準が100点中66点とのことで、やっぱりぎりぎりセーフ、 滑り込みセーフだったようです。
 ホームページの情報だけでは心配だったのですが、合否の郵便ハガキが届けられて、 開いてみると、合格証明書でした。受験5回目にしてようやく合格しました。 すべて独学で、スクールとか通信講座とかは受けていません。
 今回の合格率は4.0%、合格者数は125名でした。合格率4.0%は過去最低タイのレベルで、 合格者数125名も過去最低の人数です。例年150名前後の合格者が出ているのですが、 1点、2点の差が合否の分かれ目になったようです。
 同時に発表された、合格者の年齢分布を見ると、60代以上で合格が3名いました。 そのうち1名がわたしになります。
 試験に合格したものの、上のハガキの右半分に、気象予報士登録のご案内というのがあって、 気象庁長官の登録を受けないと、法的には気象予報士にはなれません。 その手続きが気象庁のHPにあって、郵送で登録申請するとき手数料3600円が必要とありました。 試験の受験手数料に比べれば、また運転免許証の更新手数料に比べれば、格安ですが、 一回きりなのでこんなものかと思っています。

 合格した5回目の受験までは、ほとんど新たに図書は購入していません。前回(第43回)の実技試験 の解説は、「模範解答と解説」本を国会図書館で調べてきました。あとは、手持ちのテキスト(自作ノートを含む)を使い、 繰り返し読む、繰り返し過去問に取り組むことをしました。

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3.学習法

 初回の平成25年第1回(通算第40回)から合格するまでの平成27年第1回(通算44回)の間の、わたしの学習方法を以下紹介します。

3.1 図書館での座学

いつもの図書館(クリック:拡大)

 学習する場所と時間ですが、やはり自宅に籠もって独学で学習すると、怠け癖がついてしまい身につかない かと思い、自宅以外の場所をお薦めします。わたしの場合は車で5分のところに市立図書館があって、以前から 利用していました。図書館には、読書するスペース(机、椅子)、ソファ、外部から本を持ち込み学習する 部屋(講座室といっていた。パイプ椅子と2人掛けデスクあり。)があって、普段の日は自由に利用できました。
 講座室以外にも、開架の部屋には本の持ち込みができる勉学用の机・椅子が数は少ないですが、窓際に用意されていて、 利用することができる。窓際席には手元を照らす照明があります。
 夏休みなど講座室が満席に近いとき、あるいは行事で講座室が塞がっているとき、社会人用に確保された窓際席 を利用したこともあります。
 近所にこうした学習のためのスペースがあったことも、学習効率のアップには必要だったとも思います。

 2013年の当初から、資格試験(高圧ガス、危険物など)の受験のため、近所にある市立図書館の講座室に、 テキスト、ノートなど勉強のための道具を持ち込み、座学により、勉強を実施していました。 図書館であり、日曜と月曜(定休日)以外の週5日の午前中はほぼ通ったことになります。開館する朝9時からお昼12時の 一日3時間をテキストの読み込み、ノート取り、過去問の練習などに割り当てました。
 お昼は、昼食をとりに自宅へ帰りますが、午後にも極くたまに図書館へ出掛けて、勉強を続行することもありました。 午後は健康のためのサイクリングに天気のいい日には連日行っていました。雨降りの日や風の強い日はサイクリング を休み、午後も図書館に通った訳です。午後1時から午後4時頃までの3時間くらい、座学で勉強しました。

 一方、夜間はどうしても自宅での学習になりますが、自宅でテキストを開くということはほとんどしていません。 学習の環境がないことはないのですが、主にパソコンを利用した受験ツール作りとかインターネットで の調べ物とか気象庁ホームページとかを巡っていました。もちろん必要なページは、ダウンロードし、手元に保存し、印刷し、 紙資料としていました。紙資料は、図書館でじっくり読み込むことにしていました。
 夜間はパソコンと向き合っていた時間が長く、それも気象予報士とは無関係な時間が大部分だったと、今に なって回想しています。

 また、過去問の収集のために、国会図書館(東京)に出掛けて、「模範解答と解説」本の必要部分の コピーをとってきたこともあります。国会図書館へは年に2回くらい通いました。
 国会図書館の「模範解答と解説」本は、全巻がそろっていて、特に実技試験の解説が有用でした。 後出の購入図書リストにない「模範解答と解説」本で、過去10年分くらいの、実技試験の解説部分を、私用・研究目的 でコピーしてきました。
 この図書の解説は、論述試験の、センター解答例と違う解答例が記載されていて、違う視点の 着目点があることを認識させられました。

 市立図書館では、4.1節で後述する受験参考書をテキストとし、重要部分のマーキング、キャンパスノート(後の、独自ノート)への 転記・追記、その日の進み具合をマークし、テキストを繰り返し読むことを心がけました。 テキストは大概二巡り以上を読み込んでいます。
 ノートに転記・追記するだけで安心してしまう傾向があり、記憶する作業が別に必要になることは言うまでもありません。 若いころと違い、60代となると記憶力が悪くなり、試験直前に記憶すべき事項を重点的に記憶する作業を行いました。
 記憶すべき事項とは、わたしの場合、漢字書取り、気象用語の一日の時間帯、雨風の強さの表現、台風の強さ・大きさ、 国際天気記号(100種天気、雲の状態、視程と距離)、波浪の高さ、海上警報などです。

当初のキャンパスノート(クリック:拡大)

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3.2 独自ノート作り

独自ノート:学科一般(クリック:拡大)

独自ノート:学科専門(クリック:拡大)

 第1回目および第2回目の受験で、一般と専門の知識不足が露呈したので、当初作成していたキャンパスノート (この時点でB5キャンパスノート2冊分あり)の コピーを斬り貼りし、独自ノートを作るため、A4用紙に、出題科目毎に分類し、自分用の専用ノート を作り始めました。テキスト毎にばらばらな記述であったものが、一箇所のA4用紙にまとめることで、 見通しが良くなり、重複が避けられるようになりました。
 当初のキャンパスノートは、学習した時系列に従い、また使用するテキストの章建てに従って、ノート をとって行きます。そのためテキスト毎の要約を調べるには簡単なのですが、2巡、3巡したとき、追記が 難しい。また、テキストの章建て毎だと、類似した記述が重複することもあります。
 独自ノートは、A4の空用紙を逐次追加することで、次第にページを増やすことができ、 知識を一箇所に集積させることが可能となりました。特にテキストに載っている図表は、書き写すと 情報の漏れが出そうで、コピーをとって、これをノートに斬り貼りしています。

 わたしの作った独自ノートの学科部分のサンプルを上の写真に示します。図表はテキストをコピーし、 斬り抜いたものをノートに貼り付けています。

 購入したそれぞれのテキスト本の著者には、得意・不得意の分野があって、ただ一つのテキストのみ を利用して勉強することは合格のためには良くない。逆に云えば、オールマイティな、 「これをすべて暗記すればいい」といった優れたテキスト・受験参考書は現時点では存在しないといえます。 従って、受験のための自分用のテキストとして「独自ノート」を是非作ることをお薦めします。

 気象予報士の学科一般の試験で、法令の5択問が必ず出題されますが、法令問題はほかの理系の知識 とは体系が大いに異なっていることから、別の「独自ノート」をわたしの場合は作成しています。 法令の一条一条を読み、これを要約し、独自の法令ノートを作成しました。そのサンプルが下の写真です。

独自ノート:法令編(クリック:拡大)

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3.3 過去問の収集・整理

 過去問については、後述(4.1節)の受験参考書にある饒村著、東京理科大の過去問、成山堂の問題集などを 購入しました。これら問題集は過去問をすべて網羅している訳でなく、典型的なものを抽出し、 分類したものにすぎません。特に学科一般知識の問題は、気象技術が進歩していても普遍なはずですから、 すべての過去問を収集し、その知識を身につけることは役に立つはずと考えました。

 気象業務支援センターでは、数年以上前の試験問題は技術進歩に遅れていて、陳腐化しており、 公開しない方針のようですが、一般知識は普遍な知識のはずで、公開しても構わないとわたしは 個人的には思います。
 また専門知識や実技の過去問も、技術の進歩(ハード、ソフト面でのコンピュータの発達、衛星を含め計測技術の発達、 など)をあらかじめ考慮し、念頭に入れておけば、現時点の知識とそれほどかけ離れた違いはないように思います。

 ということで、第1回目試験に失敗した2013年に、 学科の一般知識や専門知識の過去問を全問収集し、これを学習に利用しようと 思い立ちました。収集した問題を整理して、利用しやすい形態にするには、Web化したり、 パソコンでデータベースを構築し、検索しやすいようシステム化を計画し、実際に実行に移しました。 ここで作ったデータベースやWeb家したものは、現時点では公開しておらず、スタンドアロンの自分専用の ツールとして利用しています。
 実技試験の問題も、Web上で利用、閲覧できるよう、HTML化し、パソコンで、過去問が 見られるようシステム化しています。
 過去問は、先の問題集から抽出し、テキスト化、図形化し、Webページとしました。
 問題集に載っていない問題は、北上大氏の「気象予報士受験者応援団」から、部分的に提供して 頂きました。改めてここで御礼申し上げる。サイトのURLはここ。
http://kishoyohoshi.com/
 学科一般および学科専門の過去問で、手元の書籍やネットで得られなかったものは、国会図書館にある 「模範解答と解説」本を閲覧し、そのコピーを利用し、Webページ化しました。
 一方、成山堂の平成25年度版問題集は、電子版がダウンロードできる特典が付いており、実技試験のWeb化にあたっては 電子版を利用しました。学科の過去問はすでに入手していて、電子版を利用する機会はありませんでした。
 下図に、入手整理した学科一般、学科専門、実技の各試験のリストの一部を示しています。電子化し、htmlファイルに しているので、試験問題を年代順に閲覧することができます。

過去問のWeb化:リストの一部(クリック:拡大)

 国会図書館の「模範解答と解説」本は、研究目的ならコピーを取れます。ただし枚数制限がありますが、 実技試験の解説が、他の受験参考書に比べて丁寧で、親切な記述がなされています。実技試験の解説は この本がお薦めです。
 この本の実技試験の解説は、過去20回分くらい収集しましたが、電子化してはいません。

 過去問を電子化しようと思い立って、インターネットをあちこち検索したとき、タイロスのCD-ROMの話が 交わされていることを知りました。このCD-ROMに2010年当たりまでの過去問が電子化されているようです。
 しかし、現在は発売中止になっていますが、過去問を網羅したCD-ROM、「気象予報士試験 解答例と解説」(株)タイロス があり、 2011年3月に販売終了したとのこと。わたしは見たことはありませんが、過去問の公開に拘る支援センターからの圧力があったと推察されるけど、 確証はありません。

Web化:学科一般の例(クリック:拡大)

Web化:実技の例(クリック:拡大)

Web化:学科専門の例(クリック:拡大)

 電子化した過去問の、一般知識と専門知識の例、および実技試験の一部を上図に示します。

 これら過去問のうち、学科試験(一般と専門)については、後述(3.5.2節)するデータベース化をパソコンで実施 していて、問題中の語句の検索などが実施できます。

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3.4 独学ドリル作り

 予報士試験対策として、独学用、自分用のツールを作りました。

3.4.1 電子辞書のドリル

 気象予報士試験に限らず、多肢選択問題は市販の電子辞書に、自分で問題集を作り、載せたりして、自習用のドリルを 作ることができます。わたしの場合 セイコーインスツルメント社(SII)の型番SR-S9002という電子辞書を所有していて、空きメモリにユーザー作成のドリルを インストールする機能があり、当初これを利用することを思い立ちました。
 高圧ガス、応用情報処理、知財検定など別の資格試験で、多肢選択問題の学習に、過去問を取り込み、ドリルと した経験があり、ドリル化のためのソフトウェアもSIIからダウンロードしていました。
 気象予報士試験の受験を思い立った当初に、電子辞書を利用したドリル化に取り組みました。しかし、その後は パソコンへの移植性に制限があることから、パソコンを主体とした学習ツール、Web化へと移行しています。 電子辞書の利用は、第1回の受験までです。

 気象予報士試験の学科一般および専門科目は、5択選択問題であり、これら過去問をドリル化することは 困難ではありません。SIIの電子辞書固有の問題で、カラー図表は利用できない、数式が入れられないなどの制約はありますが、 過去問をテキスト化し、図表をビットマップ(bmpファイル)化すれば、SR-S9002に取り込むことができます。

 下の写真は、電子辞書でドリルを閲覧した例を示します。左は問題の一覧、右は図を含む設問を閲覧したところです。

電子辞書利用のドリル1(クリック:拡大)

電子辞書利用のドリル2(クリック:拡大)

 組み込んだドリルには、標準で採点機能があり、正解を隠しておいて、解答を入力し判定する機能が備わっています。
多肢選択問題に限らず、○×問題、天気図記号などの説明問題、漢字書取りの問題なども、応用すればドリル化すること ができます。
 過去8回分の試験問題(一般、専門)のドリルを作成しました。また100種国際天気記号もドリル化しましたが、 パソコンへの移植などができないことから、それほど利用していません。ただドリルを作っただけに終わりました。
 試験問題の問題文の文章を、スキャナーで読み取り、テキスト化することは、あとあと、パソコン上でWeb化する際に有用でした。また、 ドリル作成のときの、下線、上付文字、下付文字、図表挿入などのタグが、HTMLタグと類似しており、 HTML化するときには文字列置換することで容易にファイル変換することができました。

 電子辞書の携帯容易さ、電池が長持ちという長所はありましたが、ドリル作成の手間がかかり、PCへの移植性 に難がありました。携帯のし易さという面では、サイズがやや大きく、胸ポケットには入らないことから、 混雑した電車内での利用するときは、制限されるかも知れません。

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3.4.2 定番・暗記カード

暗記カード(クリック:拡大)

 暗記ものといえば、定番の暗記カードが古くから利用されています。上の写真はわたしが作った暗記カードの例 です。少し厚めのカレンダー用紙の裏面に、印刷し、片隅をエナメル銅線で括ったものです。

 カードには、国際式天気図で用いられる、100種天気記号、8分雲量記号、上中下層の雲記号、 雨の強さ、風の強さ、一日の時間区分、台風の強さ・大きさ、…など試験に出題される、暗記すべき 事項をカードにしました。
 カードに印刷すべき事項を、MS-Wordで作成し、A4用紙に出力後、切り離すことでカードを作りました。

 カードには国際式天気図記号などを印刷しましたが、これら記号の画像は、Wikipediaの「地上天気図」
https://ja.wikipedia.org/wiki/地上天気図
にほとんどの画像ファイルが掲載されているので、利用されるとよい。

 暗記カードは、小さく、ポケットに入れられるので電車での移動中に利用しました。主に受験会場に向かう 電車の中で開き、記憶することに務めました。カードなので追加・削除が簡単で、主に記憶するときに役立ちます。 しかし、わたしは普段は電車を利用することもなく、利用価値は少なかった。

 暗記カード以外に、IC Recorder(MP3ファイルで録音した音声を再生)で、関連法規の第1条の目的の部分 を自分で録音し、繰り返し聴くことを試したこともあります。自分の音声を繰り返し聴くと、やや違和感を感じ、 すぐに止めてしまいました。プロの女性アナウンサーの、明瞭で綺麗な音声であれば、繰り返し聴くことに耐えられる かもしれません。だれか自信のある方、ネットにアップされてみてはいかがでしょうか。期待してます。

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3.4.3 作図練習帳

等圧線の描画練習1(クリック:拡大)

等圧線の描画練習2(クリック:拡大)

前線の描画練習(クリック:拡大)

 3回目の受験の結果、学科一般と専門は免除となり、次回は実技のみの受験ということで、実技試験対策として 2014年11月頃に作図問題対策として、作図練習帳の作成をはじめました。
 作図問題として、過去の実技試験問題や受験参考書に記載している練習問題から、問題文とブランクの解答用紙とを スキャンし、MS-Word上に、再配置します。このとき、ブランクの解答用紙と解答例とを重ね合わせたとき、ちょうど サイズ・位置が一致するように図のサイズ調整を行います。自分で作図した線と解答例の線を透かし合わせ、一致したら正解 というように作りました。
 ブランクの解答用紙は、トレーシングペーパーに裏から印字(左右逆転させて印字)するように作ります。 一方、解答例は通常の白い用紙に表から普通に印刷します。そして、作図練習はトレペの表面(インクの乗っていない面)に鉛筆書きで記入します。 そうすると、解答用紙と解答例とを重ね合わせると鉛筆書きの自分の解答と、解答例との違いが分かるというもの です。表面に鉛筆書きすることで、鉛筆の線を消しゴムで消すことで、インク面をこすらないので何度でも利用できます。

 作図問題として、単純に等値線を描く、シアラインを描く、ウィンドプロファイラーの前線を描く、 エマグラム上でSSIを求める、地上天気図に前線を描く、ジェット気流を描く、低気圧の移動を描く、 など多くの作図が出題されています。
 実技過去問を電子化していたので、パソコン上で練習帳を作るのは比較的簡単にできました。なお左右逆転して 印刷する機能が、たまたま所有しているプリンタ(Brother DCP-J925N)でできたのが幸いしました。

 上の写真の等圧線の描画練習1は、トレペの問題用紙とその下に解答例を重ねた練習帳の一部を示します。
 写真は同じく等圧線、前線の描画練習で、トレペと解答例を重ねた練習帳です。
 写真下は、前線などの描画練習で、トレペの問題用紙のみを示しています。

 作図練習帳は、3回目の受験後、作り始めていました。過去問、受験参考書から抜粋した合計100問余りを 集めました。予報士試験の4、5回目の受験時に、それぞれ一度づつ練習を した程度です。作ってすぐの、初回の練習では、はじめてのことでもあり、新鮮に感じましたけれど、二度目の練習の ときには、解答をうっすらと記憶しており、それほど新鮮味を感じませんでした。

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3.4.4 漢字書取りドリル

漢字書取り(クリック:拡大)

漢字地名(クリック:拡大)

 実技試験、特に5回目に受験した第44回試験で見られたように、漢字書取りが必須であす。十種雲形、都道府県名が 漢字で書けないと失点します。また、漢字ではないけれど、同じく第44回試験では海上濃霧警報が出されている 海域名を記述する、まるで地理の試験のような出題が見られました。今後もこうした気象とは関係ない漢字、地理の の問題が出題され、受験者の必須学習項目となると思われます。
 実技の論述問題でも、気象用語や地名などを漢字で書けないと、制限文字数をオーバーしてしまうなどの弊害が あります。実技の過去問を練習しているとき、たまたま「襟裳岬」という地名が漢字で書けないことがあり、難書取漢字リスト をノートに書きためていました。これが発展して、漢字書取りドリルとなりました。ドリルといっても、漢字とひらがなの 読みが並んでいるだけで、漢字部分を紙で隠して、書取りの練習をするだけというしろものです。

 写真左は、漢字書取りドリルで、わたしの場合の難漢字はこの程度のレベルです。同じく、写真右は、難書取地名です。
 漢字の得手・不得手があり、個人レベルでも差があるので、自分の漢字レベルに合わせた書取りドリルを用意 する必要があります。

 このほか、過去の気象予報士試験では、今だかつて出題されていませんが、英語表記に関する出題が 今後範囲拡大して出題されるかもと考えていました。それに備えて、略字(例えばIPCC、ECMWF、JPCZ、CAPE、CINなど) のFull Wordとの対応リストも準備していました。
 気象業務法の第1条の目的にある、「国際的な協力」ということに関しての出題が、過去全く見られない、 英文の問題がほとんどないことを、受験当初から不思議に思っていました。geostropic wind, isotropic, barotropic など気象専門用語の英文がほとんどのテキストでは紹介されていません。
 工学系のわたしは、「気象予報用語集」という本を購入したとき、英文表記が用語毎になされていないのにびっくり。驚きました。 理系の人間の普通の感覚で、日本語の用語の解説に英文表記を併記するのは当たり前と思っていました。
 予報士の試験問題が気象庁か業務支援センターかどちらで作られているのか分かりませんが、これで「国際」化を法令で目的としてうたっている とは残念無念です。

 FOG、GW、SW、TW程度の英語では、「国際的な協力」と言えないと思う。国際的な協力という観点から、英文に係わる設問が、 次回以降の試験で、出題されるかも知れません。

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3.5 コンピュータ利用

 気象予報士試験の学習の一環として、昔とった杵柄(きねづか)ではないけど、パソコンのハード、ソフトの使用経験を生かして これを有効に利用し、学習効率を上げようと思い立ちました。 気象予報士試験以前にも、情報処理(基礎、応用)、危険物、高圧ガスなどの資格試験を退職後、受験していて 電子辞書のドリルの作成やコンピュータを利用する学習ツールを試してはいました。
 夕方から夜間の学習は、コンピュータと向かい合って、受験勉強するというよりも、試験対策のための 学習ツールを作っていたといえます。ただ、時間をかけてツールを作ったはいいが、それを十分に利用して、学習するという ところまでは至っていないのが、現実で、反省点でもあります。

 自宅には、デスクトップPC、ノートPC、複合プリンタ(コピー、スキャン可能)、デジカメ、インターネット環境が すでに整っていました。またOfficeをはじめ、FortranやC言語を使ったコード開発環境もありました。

3.5.1 過去問のウェブ化

 まず最初に取り掛かったのは、学習法(3.3節)のところでも述べたように、気象予報士試験の試験問題を、初回第1回(平成6年)から最新版まで のすべての、学科一般、学科専門、実技の試験問題を収集することから始めました。収集した問題を、文章部分はテキスト化 し、図表部分は画像ファイル化しました。これを実施するには、スキャナーで読み取り、OCRソフトでテキスト化 しました。

 当初は、電子辞書(前述のSII製 SR-S9002)をターゲットとして、過去問のうち学科一般と学科専門の多肢選択問題を、ドリルとして組み込むつもり で、過去問のテキスト化を実施していました。電子化は電子辞書の仕様で作らねばドリルとならないため、通常のHTML言語 には類似していますが、タグが異なったり、図表はビットマップファイルで取り込むなど仕様が制限されていました。
 しかしながら、HTML言語に変更することは、電子ファイルの文字列置換をすることで、容易に変更できました。
 ウェブ上で閲覧するには、HTML言語のタグを使い、テキスト化した文章に装飾を施す作業が 必要となります。上付き・下付き文字、下線、数式、図の挿入などのタグを挿入し、すべての過去問のWeb化 を実施しました。
 上述の"3.3 過去問の収集・整理"に、Web化し、出来上がったサンプルの例を表示しました。
 また、それぞれの設問に対する正解を、同時にWeb上で閲覧できるようにし、ページを開いただけでは 正解が見えないように工夫しました。具体的には、表示されている正解文字列にマウスカーソルを合わせると 解説が表示される機能を利用しました。サンプルを次行に示すので、マウスカーソルを文字列"正解"の上に 合わせてみてください。
正解
マウスカーソルを文字列に合わせると、解説を表示するトリックは、次のHTMLで可能です。

<a href="#dummy" title="正解:ここで正解の番号を表示します" style="margin-left:50px;">正解</a>
 文字列に存在しないリンク(#dummy)を指定し、クリックしてもジャンプしないようにしています。 また、titleで表示される解説を指定しています。styleはこのページ用の表示のためだけで、通常は不要です。
 ほかのサイトで、背景色と同じ文字色を利用するなどして、隠すことをしているのを見掛けますが、 この方法の方がスマートとは思いませんか。

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3.5.2 学科問題のデータベース化

過去問データベース検索画面(クリック:拡大)

 過去問のうち、学科一般や学科専門は、5択問題であり、Web化して学習用ツールを作ることは簡単に できそうです。事実、ネットにはこうしたツールの「WEB問題作成ツール」のサイト、
http://www.fureai.or.jp/~irie/webquiz/
や、oq-producerによる学習システム、oq-series公式サイト、
http://el.minoh.osaka-u.ac.jp/oq/
があって、無料で利用できます。これら学習ツールを気象予報士試験の過去問に適用し試したことがあります。

 わたしが目的とする学習支援システムというか、ツールの持つべき要件を記すと次のようなものなります。

 これら要件を満たすには、やはり自分でシステムを構築するしかなく、2014年の年初から開発をスタートしました。
 具体的には、データベースとしてMySQLを用い、同じくPHP言語ベースでWebページを作成しました。
 出来上がった、過去問の検索画面のサンプルを下図に示します。気象予報士試験では全く同一の問題が出題 されることはなく、情報処理技術試験のように、過去何度も出題されるということはありません。しかしながら、 類似問や部分的な選択肢として再利用されることもあり、データベース化することに文字列検索が可能と なったことは、利用価値が高いと思っています。

 またデータベース機能を使い、正答率などの統計情報を蓄積し、正答率の低い問題などを抽出し、再学習 するなど、学習支援のための機能がフレキシブルに追加できることは拡張性があり、望ましい。

 実際にデータベース機能を用いて、実際に学習したかというと、これもまた「宝の持ち腐れ」気味で、作ることに 注力し、利用することはほとんど出来ませんでした。一応出来上がったことで、安心してしまったかも知れません。

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3.5.3 インターネットの利用

 気象予報士試験を受験するためには、各種の試験問題の素材となる話題が満載の「気象庁のホームページ」
http://www.jma.go.jp/jma/index.html
が必見です。これは閲覧・熟読し、場合によってはプリントアウトしておくべきです。
 気象庁のホームページには、大量の情報が記載されていて、必要なところを印刷し、学習用テキスト として利用すべきです。特に、「知識・解説」の部分の気象に係わるところは是非一読すべきです。また、 各種データ・資料にも、知っておくと便利な情報があります。

 また、普段から現在の天気、実況天気図、予報天気図、衛星画像、アメダス、ウィンドプロファイラー、気象レーダー、 ナウキャスト、解析雨量などの図やチャート類は見ておくべきものと思います。普段からこうした現況を 注意し、自分の住んでいるところの身近な天気と比べるとか予想するとかを心がけることも、試験の対策 になります。
 わたしは、月一度くらいの頻度で、一連の専門の天気図をダウンロードしています。これを特に活用して、学習に役立てるということ は特にしていませんが、普段から見慣れておくつもりでダウンロードしていました。 2013年の初回受験のとき、インターネットでNHKラジオの気象通報を録音し、これを使って ラジオ天気図を描く練習を多少したことがあります。このとき、正解を確かめるため、気象庁や気象協会のサイトから 実況天気図をダウンロードしていました。この流れで、気象通報により天気図を描くことはしなくなりましたが、実技試験 で見られる地上天気図や予想図などを定期的にダウンロードするようになったわけです。

 気象庁のホームページ以外にも、受験に必要で、常に注目し、閲覧したほうが好ましいサイトがあります。
 わたしの独断ですが、以下のサイトをブックマークしています。

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3.5.4 その他情報

 前節でも述べたように、受験当初は、NHKラジオによる気象通報の録音し、天気図を作成する練習をしていました。 そのため、ブランクの天気図用紙を購入しましたが、それほど消費しておらず、もったいないことをしたと、多少後悔しています。
 ラジオ天気図を自分で描くという練習は、気象予報士試験のための学習とか試験対策にはならない気がします。等圧線を描くスキル を磨くにはいいかもしれませんが、受験対策として、実技過去問 の作図問題を自分で解いた方が練習にはなると思います。

 あと、気象庁のホームページからダウンロードできますが、「日々の天気図」という毎日午前9時の天気図と その概況が簡潔に見られます。毎月25日に、先月一月分の天気図がPDFファイルにされ、公開されています。
 この「日々の天気図」は、2002年頃から現在まで気象庁サイトでダウンロードできます。わたしの場合、実技試験 の20xx年xx月xx日といった出題が、何年何月何日かを知るのに利用していました。いわゆる、実技試験の出題を予想したり、 出題がほぼ何年前の天気図が利用されているかを知ること、つまり出題者の考えそうなことを予想した訳です。 最終的には、予想しても当たりませんでしたが、決して無駄な努力とは思いませんでした。

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3.6 実技対策

 気象予報士試験の学科一般および学科専門については、代表的なテキストをほとんど暗記するまで読み込みすれば ある程度の知識レベルに到達することができます。
 ただし、専門知識については技術革新のスピードが速いので、それなり に最新知識をインターネットなどから常に得ておく必要があります。最新知識といっても、タイムラグがあって、 2015年に運用が開始されたひまわり8号の画像は、まだ試験に出題されておらず、数回先の試験には使われると思います。
 ということで、気象予報士試験の難関は、何といっても実技試験にあるということは異論がないと思います。そこで、 わたしの経験から、わたしの場合はこう工夫した、こう対処した、こう対策を立てたというようなことを以下紹介します。

3.6.1 受験の持ち物

 下の写真は、わたしの持ち物のスナップです。これ以外に18cmの直線プラスチック定規、ひと組みの三角定規を持ち込んでいます。
 写真から分かるように、右上の3本のマーカーペン、3色の色鉛筆、ディバイダー、ルーペ、 クリップ、消しゴム(本番では予備を含め2個)、シャープペンシル2本です。
 このうち、クリップと色鉛筆はそれほど利用しませんでした。マーカーペンは、図表を読むとき、極大・極小を マークするなどに利用します。ディバイダも毎回利用するわけではありません。長さを測るときに利用 する程度です。ルーペは、歳のせいか、図表の細かい数字や線を見易くし、見間違いを防止するのに必須でした。 消しゴムも論述文章を大きく消すときに、良く消える、普段使い慣れた消しゴムが必要です。机が小さく、 落っことしたときのため、予備をいつも用意していました。
 シャープペンシルは、普段、使い慣れたものを2本用意しています。もちろん、替え芯はそれぞれに あらかじめ補給してもっていきます。文章を消して書き直すことを考えると、わたしの場合は、2Bの柔らか目 の芯を使います。普段も2Bを利用しています。

試験会場へ持込可能(クリック:拡大)

 持ち物というか、試験のとき、机上に置くものとして、受験票は必須です。これも試験中に落としたりすることを防止するため、 机に貼り付けるため、カットしたセロテープを持ち込むという方法がネットで紹介されていて、わたしはしませんでしたが、いい方法だと思います。
 それと、夏の試験では、わたしの場合、手に汗をかきやすいので、タオルハンカチを机上に出して置いて試験を 受けました。試験監督官が一応、手に取って、調べていましたが、何も注意されませんでした。ティッシュペーパーは ズボンのポケットにしまっていますが、万が一、鼻をかむときには、試験監督官に断ってから取りだしたほうがよさそうです。 これは経験ありませんが、カンニングを疑われるよりはましです。
 ペットボトルは、流石に試験の前にかばんにしまうよう通告されます。今まで、机上において試験を受けられたことは ありません。

 受験案内(平成27年度版、第44回受験時)に記載されている、持ち込み可能なものとして、次のものが許可されています。

必須:鉛筆またはシャープペンシル(いずれもHB黒)、プラスチック製字消し、
   ものさし(分度器は不可)、コンパスまたはディバイダ
任意:色鉛筆、マーカーペン、ルーペ、ペパークリップ、時計(計算・辞書等の
   機能付きや音の出る時計は不可、携帯電話・各種通信端末による代用は不可)
 以前には、「ものさし(分度器は不可)」のかわりに「定規(物差し)」となっていました。分度器のように 角度を測る文具は持ち込めなくなりました。「プラスチック製字消し」とは消しゴムのことです。
 わたしが学生のころ、「字消し」というのは製図で使う、薄いステンレス製の各種穴開きの板のことを指して いました。製図で引いた線で消したいところに、穴を当て、その上から消しゴムで消す板です。穴のあいた部分だけ が消えることになります。「字消し」で「プラスチック製」というのは何だろうと一瞬思いました。

 三角定規は、長さを測る目盛つきのものを机上においていたのですが、「ものさし」と見なされたようで、 注意されませんでした。
 三角定規の可否について、北上大氏の受験者応援団のサイトで、「受験会場によって禁止された」というコメントも あって、試験監督官や実施会場に大きく依存しているようです。三角定規が使用禁止になると、後述(3.6.3節)する「さとちゃんの方法」 で、図を読むときに補間することができなくなります。
 三角定規などに16方位の判別に役立つよう線を入れるという方法がネットにありますが、分度器が禁止されたので、 今後はこの方法は不許可となる可能性が高い。いわゆる不正行為に該当するかもしれませんので注意が必要です。 もっとも、16方位を読み取る出題で、角度を正確に求めて判別しなければならない出題は、過去問でもそれほど 多くはありません。目視で判断できる問題がほとんどです。
 ほかにも、定規に独自の目盛を入れる方法がネットに見受けられますが、不正行為に該当することに なるかも知れませんので、注意が必要です。

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3.6.2 時間との戦い

 近年の実技試験では、出題内容のボリュームが増加している傾向があります。第40回試験の最初に受験したとき、 不慣れなため、全問に解答出来ず、途中までで制限時間に達してしまいました。その後、制限時間内に全問解答できる ように練習を繰り返し、訓練しましたが、数問の文章問をブランクのまま提出してしまうことがたびたびありました。
 実技試験の内容には、穴埋め問題、多肢選択問題、作図問題、字数制限のある文章で解答する論述問題、計算問題などがあります。 論述問題や計算問題は解答を導き出すために、どうしてもある程度の時間を必要とし、解答が後回しになること もあります。実際、当初のころ、こうした問題を飛ばして、ほかの易しい問題を片づけてから、再び取りかかったことも あります。
 一旦、出題文を読んでから、これを飛ばして、再び戻るという手間・時間は、大きな時間ロスであって、得にはならない ことが分かってきました。それよりも、全問をとりあえず解答し、解答用紙を埋めて、5分でも良いから見直す時間を作る よう、心がけ、5回目の受験のときには実際に、見直しの時間を作ることができました。

 練習として実技試験の過去問を解くときには、必ず時間計測し、解答に要する時間を測定しました。その結果、あるいは、実技 試験のテキストにも記されているが、キーワードというか出題者が期待する、必須の言い回しが問題毎にあること が練習を繰り返すにつれ分かってきました。
 それゆえ、キーワードとして何が要求されているかを判断するスピードがついてきたように思います。
 過去問によっては、出題者が何を期待しているかがさっぱり理解できない、伝わってこない設問も、ときにはあって、 問題を説明している日本語、語句、言い回しが悪い、説明が不適切・不親切などと思ったこともあります。こうした出題 はめったにありませんが、出たら諦めて、適当な解答をでっちあげるしかありません。
 穴埋め問にしても、多肢選択問にしても、解答用紙をブランクのまま出してしまわないで、適当な答えでも書かない といけません。運が良ければ得点に繋がる可能性があります。
 作図問題にしても、線の引き方は多種多様であって、正解は一つではないはずです。部分点狙いでもいいから、ブランク のまま解答用紙を提出することは避けたほうがいい。

 論述問題にしろ、作図問題にしろ、支援センターから公表されるのは「解答例」であって「正解」ではありません。 キーワードやそれに類する語句があれば、部分点をもらえるかもしれません。ここで、試験制度の透明性が欠如している と思うのは、部分点がどのように配点されているかが、まったく公表されていないことです。採点する人の主観だけ で判断されているのではと思うこともあります。

 実技試験の受験勉強には、過去問を数多くこなして、練習する以外には方法はないと思います。日々の天気図を眺めていても、 気象予報士試験にいまだ合格していない素人には、何が問題であるのかが理解できないはずです。
 わたしの場合のトレーニング方法は、実際の試験の解答用紙のコピーを用意し、これに解答を書き込んで、 練習を繰り返すことを行いました。解答用紙を印刷する手間、インクやコピー紙のコストを惜しんではいけません。 そして、支援センターの 解答例を使い、添削し、何処が違うのかをひとつづつ確かめることを行いました。
 実技試験を練習し、解答例と比較し、添削したサンプルを、下図に示します。

実技試験のトレーニング(クリック:拡大)

 解答用紙のマス目に解答を埋めていくとき、特殊な文字、括弧やコンマ、ピリオド、"hPa"、"m/s"などの単位を マス目にどのように埋めるのかが、「解答例」と比較すると、分かってきます。過去問の練習に、書き損じた用紙や 新聞の折り込みチラシの裏紙を使い、マス目もない用紙を使って練習することは避けた方がいい。
 わたしも、4回目の受験失敗までは、印刷された用紙や不要なコピーの裏面を用いて練習していて、上記事項に やっと気付いた次第です。

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3.6.3 ものさしの利用

さとちゃんの合格資料から(クリック:拡大)

 持ち込み可能な文具のうち、2つの三角定規セットを使った、緯度・経度の簡単な読み取り方法は、「さとちゃんの合格資料」に あります。ディバイダを使い、直線定規で長さを測る、割り算が必要なオーソドックスな方法に比べ、スピーディで、ある程度正確な答えが 出せます。この方法は、緯度・経度のような内挿以外にも、Showalter Stability Index(SSI)をエマグラム上で作図し、 求めるときにも応用が効きます。是非マスターすべき、受験テクニックといえます。
 ただし、毎回の試験で図の内挿問題が出題される訳でもなく、出題されないからといって、軽んじないでほしい。
 また、経度・緯度を正確に読み取るため、10分割や12分割の、目盛を定規に貼りつけるアイデアを見掛けるけど、 一歩間違えば、カンニングと見なされます。注意しましょう。
 なお「さとちゃんの合格資料」は、北上大氏の受験者応援団のホームページにあり、閲覧・ダウンロードすることができます。参考まで。

 SSIと言えば、エマグラムを利用して作図し、高度500hPaまで湿潤断熱線を補間して、温度を読み取るのだけれど、 この少しカーブした湿潤断熱線を補間するのに、苦労したことはないだろうか。曲線を引くときは、直線定規では なく、曲線定規というのがあって、ゴムのような弾性素材からできていてクネクネ曲がる定規なのですが、昔、大学 生のころ、実験データの曲線を引くのに利用していて、便利だったのを記憶しています。それ以外にも、雲形定規と いって、数枚のプラスチック製の種々カーブが組み合わさった板もあったのを覚えています。
 それはさておき、曲線定規があれば、湿潤断熱線を補間するのは、割と楽にできるのだがと思っています。しかし、 試験会場には持ち込めないので、フリーハンドで補間せざるを得ません。
 フリーハンドで補間して、SSIを求めるとき、フリーハンドゆえにSSIの値の誤差が大きくなって、正解と大きく違う 結果となることを、わたしの場合、過去問で練習しているときに頻繁に経験しました。

 SSIを求めるときは、まずLCL点の湿潤温位を補間して求めます。このとき、さとちゃんの方法を使うと簡単に割合 が分かります。つぎに、500hPaで、この割合となる点をやはりさとちゃんの方法を応用して、2つの三角定規を動かし ながら決めます。そして、その点の温度を読み取って、気温との差を求めるとSSIが得られます。
 LCLと500hPaの2点で、さとちゃんの方法で補間すればよく、湿潤断熱線をフリーハンドで描くよりは、SSI値の精度が 向上します。

 わたしは、サイト:エクセルのグラフで学ぶ気象学に 紹介されている、各種断熱線の計算式、等混合比線の計算式を組み込んだ、SSIを計算するプログラムを作りました。 MS-ExcelのVBAで計算させ、エマグラムも描画できる機能もあります。これを使う と、ワイオミング大学の高層気象観測データで表示されるSSI値とほとんど誤差のない結果が得られることを、 確かめています。このコードはほかの場所で公開する予定です。

 3.6.1節の持ち物で述べたように、三角定規の持ち込みが不許可になると、さとちゃんの方法による内挿方法が 使えなくなります。是非、持ち込めるようになっていてほしい。

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3.6.4 トレーシングペーパーの使い方

 はじめて気象予報士試験を受験した時(2013年8月)、実技試験の問題用紙にトレーシングペーパー(トレペ)が1枚挟んでありました。 そのときに学習した受験参考書には、トレペについては、一言も触れているものはなく、どう利用するのかが全く分かりませんでした。
 実技の受験参考書を取りそろえ、読むうちに、トレペの利用のし方をところどころ紹介しているのに出逢い、納得しましたが、 いきなりトレペが現れたとき、戸惑ったことを覚えています。

 基本的には、複数の図面間で気象要素(低気圧、リッジ・トラフ、極大・極小値など)が地理的にどのように 移動するかを追跡したり、あるいはどのようにオーバーラップしているかを確認するために利用します。
 図に描かれている、緯度・経度線をトレペに写し、気象要素をトレペ上にマーキングします。低気圧中心なら×印とか、 リッジ・トラフだったら線分をトレペに書き写します。このトレペを別の図の緯度・経度線に重ね合わせ、その図 の気象要素と比較することで、その挙動とかオーバーラップ具合を判断します。
 低気圧の時間的な移動を、解答用紙の地図上に記入せよなどの作図問題では、トレペを使い、時間毎の 位置をトレペに写し取っていきます。
 ここで、問題なのが、問題というより厄介な事なのですが、トレペに描いた×印をどのように、解答用紙に 再び、書き写すかということです。解答用紙はトレペのように透き通っていないので、トレペを下にして、解答用紙 を上にして、写し取ることはとても無理です。

 低気圧の移動位置の数点くらいなら、ディバイダの針で、トレペと解答用紙を重ねて、穴あけして、書き写す ことができます。しかし、これが、温暖前線とか寒冷前線だったら、皆さんどうしていますか。
 わたしの場合は、上に重ねたトレペをめくり、解答用紙にその部分を少し書き、またトレペを重ねて、 解答用紙に記入した線と比較し、またトレペをめくり、また少し書き、…を繰り返して、全体を解答 用紙に書き写すという作業をしました。もっと良い方法があるのかも知れませんが、あったら教えてほしいものです。
 アイデアとして、トレペの裏にクレヨンとか色鉛筆で解答の線の周りに塗って、それを解答用紙の上に置き、 トレペの表から線をなぞって、解答用紙にクレヨンのあとをつける。いわゆるカーボン紙の応用はいかがでしょうか。
 これは実際に、テストでも試したことはありません。クレヨンって持ち込めるのかもあります。

 トレペを使って、主に作図問題を解くわけですが、作図問題の正解というのはある許容誤差をもって採点 しているはずですから、トレペの線を解答用紙に写し取ることに、それほど神経質になることはないと思います。
 どの程度のずれであったら、正解なのか、あるいは、部分点がどのくらいもらえるのかの、判断基準が 受験者側に全く知らされておらず、また支援センターから開示されてもいないのが、もっとも大きな問題です。 受験者側からすると、自己採点のしようがありません。
 前線の終点を何処まで引いたらいいのか、トラフ・リッジの線は始点と終点はどこかなど、厳密に正解を指摘すること ができないはずです。こうした作図問題の満点とか部分点の配点とかどうなっているのでしょうか。是非知りたいものです。
 エマグラムからSSIを求める設問にしても、正解のSSIの許容範囲が、プラスマイナス何℃なのかを開示すべきでは ないでしょうか。

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3.6.5 計算問題のテクニック

 実技試験に限らず、学科一般や学科専門でも計算問題が出題されることがあります。せいぜい四則演算程度のものですが、 暗算が苦手で、筆算でも最近はご無沙汰しっぱなしでは、計算に大いに時間を費やすことになります。
 割り算の何と面倒くさいことか。いまどき、筆算でもあるまいと思うのですが・・・。
 ほかの資格試験、例えば高圧ガスや簿記では、四則演算のみができる電卓を持ち込むことができます。
 気象庁の予報官が、予報に際して手計算で計算しているとは思えず、少なくとも電卓、恐らくはパソコンのエクセル 当たりを利用していると想像してますが、筆算を強いる試験問題は相応しくない、時代遅れも甚だしいと思います。

 わたしは実技の受験で、おおまかに計算してしまったため、失点してしまった経験があります。計算問題について反省したブログ を参考に、ここに再掲します。
 第43回気象予報士試験の実技1で次のような計算問題が出題された。
  設問:「うねりの伝播速度\(C\) [km/h]は、海が深い場合には \[ C=\frac{3.6gT}{4\pi} \] であらわされる。ここで\(g\)は重力加速度、\(T\)は卓越波の周期[s]である。卓越波の周期を10s、\(g\)を9.8、\(\pi\)を3.1とし、 うねりの12時間後の移動距離を10km刻みで求めよ。」
という、すごく単純な計算問題です。答えの移動距離\(L\)は、時間×移動速度ですから、\(L=12C\)となり、 \(C\)を上の式で計算すればいいわけです。単位系に注意して、数字を代入すると、次の分数の値を求め、10km刻みで 解答すればいい。
\[ L=\frac{12 \times 3.6 \times 9.8 \times 10}{4 \times 3.1} \]  これを手計算で計算するという問題です。電卓があれば341.4kmと、あっという間に計算でき、 10km刻みで答えると340kmが正解となります。
 ところが、実際の試験では電卓持ち込み禁止です。もちろん携帯電話の電卓機能もだめです。昔の計算尺も、対数表もだめ。 仕方なく、問題用紙の余白に手計算するしか手立てがありません。

 わたしの場合、実際の実技試験では、分母は4×3で12に近い、分子の12と打ち消し、残りの3.6に重力加速度9.8を およそ10とすれば、答え360くらいという大雑把な計算で、360kmと解答しました。 もちろん、後で電卓で確かめたら不正解でした。やはり、ある程度厳密に手計算しないと正解しないようです。 そろばんの暗算ができればいいのですが、そんな能力はありません。

 試験後、つらつら再考するに、正解340kmのうち誤差10kmはおよそ3%程度です。9.8を10と見なして2%、3.1を3と見なして3% で合計5%くらいの誤差になります。運が良くて、分子分母の誤差がお互い打ち消すなら、概略計算でも正解になった かもしれません。あるいは次に示すように、もっと数学的にスマートに取り扱う方法もあったのです。
 それは、分子分母に(3-0.1)を乗じ、\((1-x)(1+x)=1-x^2\)の関係を用い、\(x\)がゼロに近い時、\(x^2\)の項が 無視できるという近似を利用することです。 \[ \begin{align} L &=\frac{12 \times 3.6 \times 9.8 \times 10}{4 \times 3.1} \\ &=\frac{12 \times 3.6 \times (10-0.2) \times 10 \times (3-0.1)}{4 \times (3+0.1)(3-0.1)} \\ &= \frac{12 \times 36 \times (10-0.2) \times (3-0.1)}{4 \times 9} \\ &=12 \times (10-0.2)\times (3-0.1) \approx 341.04 \\ \end{align} \] と乗算だけの式になりました。最後の341は電卓で計算。

 さらに数学的な知見をもって、( )内を変形します。 \[ \begin{align} L & =12 \times 10 (1-{0.2 \over 10}) \times 3 (1-{0.1 \over 3}) \\ & =360 \times (1-0.02) \times (1-0.03) \\ \end{align} \] もうお解かりかと思いますが、\( (1+x)(1+y)=1+(x+y)+xy \)の関係式で、 \(x,y\)がゼロに近い時、\( \approx 1+x+y \)になります。したがって \[ \begin{align} L&=360 \times \{1+(-0.02-0.03) \} \\ &=360 \times 0.95 \\ &=342 \end{align} \] ここまで来ると、360kmの5%引きで暗算できます。

 また、第43回気象予報士試験の実技1の計算問題は、ほかにもう一問、高潮の計算問題がありました。
 「気圧が963hPa、風速20m/sのとき潮位偏差が150cmと予想されているとき、吸い上げ効果と吹き寄せ効果は どれくらいか。標準気圧1013hPaとする。また、気圧973hPa、風速26m/sのときの潮位偏差を10cm刻みで求めよ」 という問題です。
 まず最初の問題で、1013-963=50hPaの圧力差があり、吸い上げ効果として50cm、残り100cmが吹き寄せ効果 の分になります。次に気圧が973hPaに変わると、圧力差は40hPaとなり、40cmが吸い上げ効果になります。
 さて、26m/sの風による吹き寄せ効果を求めるとき、計算問題になります。吹き寄せ効果による潮位変化は 「風速の2乗に比例する」という専門知識が必要です。
 前段の20m/sのとき、100cmでしたので、26m/sのときには、吹き寄せによる潮位偏差\(H\)は \[ \begin{align} H &=100 \times {\big( {26 \over 20} \big)}^2 \\ &=100 \times 1.3^2 =100 \times 1.69 \\ &=169 \end{align} \]  後になって考えると、計算はなんてことはないのですが、試験中で試験終了時間の間際で焦ってくると、 20の2乗は400、26の2乗は簡単に出ませんので25の2乗の625が浮かびます、400と625はおよそ1.5倍くらい、 だからHは150cmとラフに計算した結果をもとに、潮位偏差=40+150=190cmと解答してしまいました。
 答えは210cmで、如何に厳密に計算しないといけないかという見本です。

 実技試験の計算問題である程度精度のある計算をする必要があることがお分かりでしょう。上に述べたような 数学的なセンスを磨いて、計算すべき式をどんどん単純化する工夫を必要とします。\((1-x)(1+x)=1-x^2\)の関係 は、\(x\)が1に比べて小さいとき有効です。割り算に適用すれば、計算が掛け算だけになるかも知れません。
 また2つ目の例のように、分子・分母を出来る限り約分し、もっとも単純な割り算にまでもっていくことが 大切です。
 計算問題のこうしたテクニックは、普段から磨いておくことが必要でしょう。たまたま運悪く、\(x\)が1に比べて 無視できない大きさだったら、諦めて、シコシコと手計算する以外に方法はありません。

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3.6.6 文章の書き方

 文章を書く、作文を書く、ブログを書くなど、日ごろから分かりやすい文章を書く練習をしておく必要があります。 特に、ブログを書くという作業は、他人に分かりやすく思っていることを伝える練習になります。試験の解答を採点 する人に、こちらの真意が分かり、納得させる文章を綴る必要が大いにあります。
 気象予報士の資格は、理学系、サイエンス系の分野の資格であって、政治や経済の文系の表現やあいまいな表現ではなく、 論理的で理路整然とした、一語一句定義が厳然とした文字を連ね、文章を書く必要があります。
 そういう意味では、わたしは技術系の論文を執筆した経験があり、論理的な思考や発想に慣れている(つもり)なの ですが、これまでの文章はどうでしたでしょうか。

 論述問題で、解答の文章を作る際にも、多少テクニックがあります。まず、気象庁の独特というか専門家が使う、 気象用語があります。これらは気象庁のホームページに言葉の定義がはっきりしていて、試験の解答に使うには 厳密さがあって望ましいものです。

 例えば、風の強さの分類で、「やや強い」、「強い」、「非常に強い」、「猛烈な」。ほかにも
雨の強さ、波浪表、台風の強さ・大きさ・位置の確度、一日の時間区分を表す言葉など気象用語 は文句なく、論述問題の解答文章に入れるべき言葉です。

 また、過去問の解答例を何回も繰り返し、読んでいると、気象予報士試験で出てくる、また気象庁の予報官が使いそうな ある種の「言い回し」があることに気付くと思います。
 具体例をあげると、
 高気圧が、「進む」、「東進する」と言うのではなく、「移動する」と言います。一方、低気圧は「進む」と言います。
 カミナリは、大気現象では「雷電」、気象災害では「落雷」と言います。
 風速は、「大きい/小さい」と言いい、「速い/遅い」とは言わない。
 上昇流は、「強い/弱い」といい、「大きい/小さい」とは言わない。
 「上に行くにしたがって」は、「高度が高くなるにつれて」
 「直交する」は、「大きな角度で交差する」
 衛星画像の輝度は、「白く」の代わりに「明るく」という

など、日々の天気予報や天気キャスターが使っている言葉です。大きい小さい、強い弱いなどを、不適切に使うと 解答の文章に違和感が発生し、採点に微妙に影響するような気がします。気がするというだけで、実際のところは不明ですが、 心象を悪くするかも知れないので、注意すべきと思います。
 これら言い回しは、解答例や受験参考書などで見掛けたもの、あるいは、わたし自身が 良く使う言い回しで解答例を見て「なるほど」と思ったものなどを、ノートに取り貯めていたものです。

 また先にも述べたように、気象関連用語で、頻出する漢字や地名を漢字で書けるようにしておく必要があります。 それは、文字数制限のある論述問題です。ひらがなを使うと、文章が冗長となって、文字数を簡単にオーバーして しまい、こちらの言いたいことが十分に伝えられなくなります。
 ここ数年の過去問の論述問題での制限字数は、以前は数十字(50、60場合には100字)であったものが、 25とか30文字以内という減少傾向にあります。この制限字数以内でひらがなを使うと、残り文字数が極端に 少なくなり、それ以外の箇所で要点を要約しなければならず、採点官を十分に納得させる文章にはならないでしょう。

 理系の文章を書く作業を日ごろ行い、慣れておくことが肝要です。相手を納得させる文章を書く練習という 意味では、ブログを書くのが手っ取り早い。自分のブログをもっていなければ、他人のブログにコメント を残し、コメントに対しての反応をうかがって、真意が伝わっているかどうかを見ることでも、文章を書く 練習にはなるでしょう。

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4.受験参考書

 わたしが利用した、気象関連の受験参考書を以下に示します。気象予報士試験の受験のための参考書として、 是非ともお薦めしたい図書は、現時点ではありません。というのは、市販されている参考書は一長一短があって、 オールマイティな本は見当たらない。それゆえ、以下に示すように、受験失敗の都度、新たに図書を買い足してきた 経緯があって、数多く読めばいいという問題でなく、知識の質・深さをどうやって高めるのかを念頭に置いて 学習されることをお薦めします。
 それには、前述(3.2節)したことですが、自作のノートを作ることです。自分で、後から見て分かるノートです。

4.1 購入図書

購入図書1(クリック:拡大)

購入図書2(クリック:拡大)

 以下の図書は、購入したものです。順番はおおむね購入時期の順に並んでいます。
 絶版になっている図書などは、中古本をAmazonで購入しています。

 毎回の気象予報士試験の「模範解答と解説」は、国会図書館@東京に全巻所蔵されていて、自由に閲覧することができます。
 参考までに、ここに掲げた図書を購入するのに、合計約70,000円の費用がかかっています。経費としてはこれ以外に、国会図書館のコピー代、受験料(5回分)、交通費などがあって、 人件費やPC関連費・消耗品を除くと、資格取得までに総額15万円ほどでしょうか。スクールとか通信講座の費用と比べるとどんなものでしょうか。多少は安上がりかも。

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4.2 閲覧図書

 佐倉市内の図書館にあって、過去閲覧したものを次に示します。気象予報士試験に役立つ図書は、 流石に、市立図書館では蔵書が少ない。佐倉市内の図書館にある本を、いつもの図書館で予約し借り出す ことができます。

 ほとんどの関連図書は、一度は借り出して眺めたけれど、受験用参考書とはなりそうにない。一般知識の習得といった程度の図書です。

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4.3 その他資料

 受験参考書ではないけれど、インターネット経由で得られる情報として、次のものをプリントアウトし、 テキストと同様に読み込み、ノートを取っています。

 また、以下の法令の条文を、インターネット経由(サイトはここ)でダウンロードし、プリントアウトし、 テキストとして利用しました。法令は改正されることがあるので、できるだけ最新版を利用したい。

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5.受験の心構え

 気象予報士試験を受けるにあたり、今までわたしの受験記録とか学習法、受験対策を述べてきました。 主に、実技試験対策に偏ってしまっていましたが、試験一般に対しての注意事項などを以下紹介します。

5.1 学科の心構え

 気象予報士試験では、学科試験として、一般知識と専門知識の2科目があります。また実技試験として実技1と実技2の 2科目があります。学科試験の制限時間は、出題数15問で、60分です。一方、実技試験の制限時間は、75分です。
 試験日の時間割は、次のようになります。試験時間の合間は休憩時間になります。

科目FromTo
一般知識9:45AM10:45AM
専門知識11:05AM12:05PM
実技113:10PM14:25PM
実技214:45PM16:00PM

 今まで、実技試験の対策を縷々述べてきましたが、学科試験についても少し、対策というか 心構えを紹介したいと思います。
 学科試験は、一般知識および専門知識ともに、多肢選択(今までは5択)問題です。①~⑤ のどれか番号を選択して、マークシートを塗りつぶして解答する方式です。正解が分からなくても どれか適当に選んで解答することができますので、ブランクで提出するのは愚の骨頂と言えます。
 駄目もとと思って、どれかにマークすることをお薦めします。

 気象予報士試験の5択問題で、「正誤」の組合せを問う問題が、他の資格試験と比べて、もっとも 厄介な問題となっています。
 具体的なサンプルを示してみます。下の囲いに、平成26年度秋期の応用情報処理技術者試験で 出題された4択問題です。皆さんに理解しやすいように、情報処理の監査に関する問題を選んだ のですが、選択肢4つのうち、正解はひとつで、残り3つは誤りです。問のほんとうの正解は「正解」という文字の上にマウス を置くと、表示されます。
 わたしが受験したことのある、危険物取扱者試験、高圧ガス製造保安責任者試験など多肢選択問題 が出題されますが、すべてが、下の例のような出題でどれか一つの正解を選択する方法です。

応用情報処理技術者試験の例 問59 外部委託に関するシステム監査において、経営破綻などによってソフトウェア資産のメンテナンスが受けられなくなることを防ぐために確認すべき契約項目はどれか。
ア 開発したソフトウェアの瑕疵担保責任条項
イ 外部委託先のサービスを評価するためのSLA条項
ウ 責任の所在を明確にするためのソフトウェア開発の再委託禁止条項
エ ソフトウェアのソースコードなどを第三者へ預託するエスクロウ条項
(出典:2014年 平成26年度 秋期 午前 AP 問59)
正解

 気象予報士試験の学科の多肢選択問題が厄介だというのは、選択肢すべての正誤が分からなければ、 正解にならないという点です。5つの選択肢の中で、たとえ4つの正誤が判別できても、残る一つの 正誤が分からないと、正解確率50%となってしまいます。ということは、5問ともすべて分からないと 得点できないことに等しい。
 ひとつだけが正解で、残り4つが誤りといった ときの選択と大違いです。何とひねくれた問題かと思ってしまう。根性が悪い。素直じゃないです。
 まあ、合格したあとだから、試験制度になんとでも悪口を言えますが。

 ということで、学科試験対策として、テキストや自作ノートの隅から隅までを、正確に覚えておく 必要があるということです。最近の問題は、こうした重箱の隅をつつくような設問が実に多い。
 また、わたし自身もそうだったのですが、実技試験をしっかりしておけば、学科試験の対策にも なると勘違いしたことです。学科の専門知識は、ある程度この考えが当てはまりますが、一般知識が 実技試験を通して、身につくことはありません。やはり、バイブルの小倉本を丁寧に読み込み、図を 暗記して書ける程度までは記憶しておくべきです。

 一般知識で、わたしの場合の苦手だったのは、気候変動当たりの、東西指数、ケルビン波、混合ロスビー波、 プラネタリー波、準2年周期振動などのところです。気象学では当たり前なのだろうけど、こうした専門的知識 は誰かに教えてもらうとか、講義を受けるとか、質問をするとかの機会が欲しかった。
 最終的には、テキストを自分なりに解釈して、覚えてしまうことになりましたが、完全に理解するにはいまだ、 至っていません。

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5.2 試験会場で

 お昼のお弁当は、事前に買って持ち込みましょう。会場近くには適当なレストランやお店がほとんどありません。 弁当だと、時間を気にせず、受験する教室内でも屋外でも食べられます。また、原則ゴミは持ち帰ります。ゴミ箱 は投入口が塞がれています。
 トイレは早めか遅めに。試験終了後、トイレにほとんどの人が行きます。そのためすごく混雑し、並ぶことに なります。学科免除など、時間に余裕ある人は試験終了時刻を見越して、早めか遅めに済ませておきます。

 実技試験は、時間との勝負になります。問題や解答用紙が配られたら、注意事項が一番上のページに 記載されています。が、毎回ほぼ同じ注意事項ですのでさっと読み終えたら、その裏に透けて見える問題 文の図表リストを穴の開くほど見て、どんなことが書かれているかを知ることに心掛けましょう。わずかな 時間でも惜しむこと。

 実技試験で、図表を切り離したら、色塗りをすることを勧めるサイトもありますが、わたしの場合は、 すべての図表を始めから順に眺めます。実況天気図、衛星写真、予想天気図など定番の写真や天気図は おおよその感じをつかんでおき、何が注目点(台風、南岸低気圧、冬型、夏型、など)なのかを把握します。
 そして、後半の普段見慣れない図も、注意して何が表されているかを把握しておきます。
 そして、一番大切なのは、解答用紙を眺めることです。全体のボリュームをまず把握します。つぎに論述問題が多いのか、少ないのかをみて時間配分 を組み立てることができます。また、後半に穴埋めなど論述問題以外の解答が容易な設問があるときには、解答の順番 をひっくり返し、得点しやすい設問から取りかかることもします。
 以上で、実技試験の全体像を把握し、試験問題をじっくり読むことを始めます。制限時間内にすべてを解答しようと すると、焦ってしまい、読み落とすことにも注意します。開始早々で、時間も十分あることを念頭に、丁寧に試験問題 を読むことを心がける。焦ると、ケアレスミスを誘います。

 試験問題を読み、図面を見ながら、問題文で何が問われているかに注意し、ついでに図にマーキングするよう にしています。これも問題文が何を訴えているかを理解する作業です。問題用紙へのマーキングの例を、わたしの場合ですが、 下の写真で示します。

問題用紙へのマーキング(クリック:拡大)

 左側の3つの低気圧が話題になっていて、赤鉛筆でマーキングしています。また初期時刻と24時間予想図 ですので、18日9時の予想図であることを図に鉛筆書きで記入しています。24、36、48時間予想図などと言われると、 何日何時の予想図であるか直接理解しずらいので、何日何時とすぐ分かるように、鉛筆で記入しています。

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5.3 受験後のこと

 問題用紙は、学科、実技ともに、試験終了後は持ち帰ることができます。当たり前のことですが、 解答用紙に記入したことを、ある程度、問題用紙に書き写して、後日(ほぼ10日後)発表される解答例と比べ、自己採点する ことができます。
 学科の一般知識、専門知識は、解答を問題用紙に書き写す時間が充分にあって、自己採点するとき 問題はないのですが、実技試験では、書き写すことに時間を取られてしまうため、わたしの場合、論述問題の長文を 除き、穴埋め問題、計算問題、選択問題のような短い答えは、問題用紙にその都度書き込むように していました。また、論述問題については問題用紙に、余裕のあるときはキーワードのみを走り書きしていました。
 作図問題では、トレーシングペーパーを使う場合は、トレペにその痕跡が残っているので持ち帰れますが、 問題用紙の図に直接書き込むことをしました。
 下の写真は、実際の実技試験の問題用紙に、試験中に書き付けた苦悶の跡です。鉛筆書きであれこれ悩んでいます。

問題用紙・苦悶の跡(クリック:拡大)

 実技試験の自分の解答は、自宅に帰り着いて、その日のうちに、問題用紙を見ながら、 メモを作るようにしていました。論述問題については、出来る限り正確に思い出して、メモに解答文を残すようにしています。
 写真は、このときの作成した解答メモのサンプルです。後日発表の支援センターの解答例と照らし合わせ、自己採点し、 実技の得点を自分なりに把握しました。

実技試験の解答メモ(クリック:拡大)

 学科試験については、解答速報が支援センターより早く、数か所のインターネット・サイトに公表されます。 速報ですから、センターの正解と多少違うこともありますが、概ね正解に近いものが公表され、 学科試験の出来・不出来がある程度分かります。

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5.4 合格後のこと

 合格発表は試験後、およそ40日後に発表されます。同時に合格基準、合格者の年代別、地域別、性別など の情報が公表されます。
 また合格発表日に届くように、合否の連絡ハガキが配達期日指定郵便で、自宅まで届きます。
 不合格のときには、「気象予報士試験結果通知書」のハガキが届きます。わたしの場合は4回もらいました。学科毎 の「合否」判定だけのあっけないものです。自分の得点がいくつであったか、特に実技試験の得点を 知りたいところですが、そんな情報もありません。
 一方、合格すると、「気象予報士試験合格証明書」というハガキが、合格証明書番号xxxx番として届きます。 そして、ハガキには気象予報士登録のご案内というのが印刷されていて、実際には気象庁のホームページで その手続き方法の詳細があって、手続きをするようになっています。

結果通知書・不合格(クリック:拡大)

合格通知書・合格(クリック:拡大)

 ご参考までに、気象庁長官へ登録手続きを申請し、登録手続きが完了すると、下の写真のような登録通知書が 送付されてきます。登録番号が記載されています。登録番号は、合格証明書番号とは違う番号が発番されます。

登録通知書(クリック:拡大)

 登録申請後、およそ10日くらいで、登録手続きが完了します。

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6.さいごに

 以上、長々と気象予報士試験に合格するまでの道のりを書き綴ってきましたが、これらはわたしの場合で、 わたしの過去の経験に基づいた話です。学歴や環境が違えば、当然、試験に対するアプローチは違うのが当たり前です。 そういった事を念頭において、この記を参考にして頂ければ幸いです。

 気象予報士試験制度というかあり方は、極めてほかの資格試験と違い、ある一定の知識・経験レベルに到達 すれば与えられる資格ではないことに、まず第一に注意しなければなりません。合格者数を絞って、制限するように 見える現状の制度は、どうも資格試験というよりは、定員が決まっている大学入試に似ています。
 こうした意味では、超難関の大学相当と言えるのではないでしょうか。

 制度本来の目的である、「災害の予防、交通安全の確保、産業の興隆」といった公共福祉、それと国際的協力 が現状の試験制度に合致しているかを常に振り返る必要があります。合格者数を絞り込むよりは、より多くの 合格者を出して、その地域での防災活動などの人的資源として役立ってもらった方が、それこそ公共の 福祉を増進するのではないでしょうか。

 もうひとつ、国際的協力という面での気象予報士の役割が、現状の試験制度ではどこにも見られません。 天気図表記中に、単に記号として、FOG、GW、SW、TWなどが表記され、受験参考書などには、CAPE/CIN/SSIなど の略号が多少表記されています。この程度の英文表記で、国際的協力が果たして可能なのかということです。
 わたし自身、現状ではまったく国際的協力はできていないと思っています。

 それと、気象予報士という資格を持つことのメリットがほとんどありません。お天気お姉さん、キャスターとかを 目指すとき、あるいは民間の気象予報会社に就職するときには、有利となるかも知れませんが、わたしのような どちらでもない、地域のボランティアでもいいなあといったときは、本当に役に立つ資格なのだろうかと疑問に思います。
 平成25年に気象庁が行った、気象予報士へのアンケート結果(回収率43%、到達率74%、下記注)を見ると、約60%が資格に満足していますが、14%が不満としています。不満 の理由は、資格を生かせる場が少ないと答えた人が60%程度いました。

【注:到達率とは、郵送した送付数に対して、予報士宅に到達した数の割合。4人に3人の割合しか届いていない。予報士の義務 として、現住所に変更があった場合は届け出が必要なはずなのですが、不思議です。また回収率は、送付した数に対する回収した数の割合。】

 わたしのように、定年後に資格取得しても、資格を生かせる場が非常に限られていることがなんとも不満です。 都道府県とか市町村などの地域の防災要員とかで活躍できる場をもっと増やすことができないのでしょうか。制度改正を視野に入れて、 もっと積極的に市職員として気象予報士を確保させるなどの施策が取れないものでしょうか。
 昨今の地球温暖化によって、気候変動の振幅が増大する傾向があって、集中豪雨とか洪水とかの頻度が 増加しています。防災面での予報士の貢献は考えられないのかとも思います。

 アンケートの低い回収率もさることながら、登録名簿に記載されている住所を使って、到達率が74%という低い値をそのまま放っておく気象庁の姿勢自体が、予報士制度 に対して消極的であり、それほど重要視していないことを窺わせます。 極論すれば、単に気象庁の天下り先を確保するための制度ではないかとも疑ってしまいます。

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Appendix

 以下、わたしが学習に用いた受験勉強用のツールで、公開可能なものを掲載します。必要な方は自由にダウンロード できますが、商用利用は固くお断りします。なお、使用にあたって経済的・社会的損害が発生してもわたしは 関知しません。
 またツールとして不完全なものもありますが、ご容赦願います。

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